日本アカデミー賞最優秀作品賞にノミネートされた『孤狼の血』でも監督を務めた白石和彌監督の最新作『ひとよ』の感想(ネタバレ)です。
作品データ
公開日:11月8日
製作国:日本
配給:日活
上映時間:123分
主演:佐藤健
監督:白石和彌
公式サイト: https://www.hitoyo-movie.jp/
おすすめ度
★★★★★★★★☆☆(8/10)
家族とは。。。
では詳しく見ていきましょう。
あらすじ
「あなたたちが生まれた夜、わたしがどんなに嬉しかったか。」
どしゃぶりの雨降る夜に、タクシー会社を営む稲村家の母・こはる(田中裕子)は、愛した夫を殺めた。
それが、最愛の子どもたち三兄妹の幸せと信じて。
そして、こはる、15年後の再会を子どもたちに誓い、家を去ったー時は流れ、現在。
次男・雄二(佐藤健)、長男・大樹(鈴木亮平)、長女・園子(松岡茉優)の三兄妹は、
事件の日から抱えた心の傷を隠したまま、大人になった。抗うことのできなかった別れ道から、時間が止まってしまった家族。
そんな一家に、母・こはるは帰ってくる。「これは母さんが、親父を殺してまでつくってくれた自由なんだよ。」
15年前、母の切なる決断と残された子どもたち。
公式サイトより
皆が願った将来とはちがってしまった今、
再会を果たした彼らがたどりつく先はー
感想(ネタバレ)
6月に上映された『凪待ち』に続き白石和彌監督作品の鑑賞は今年2作目になりました。
『凪待ち』で主人公だった香取慎吾演じる木野本郁男という男はギャンブル中毒で恋人が必死に稼いだ金などでギャンブルをするとんでもないクズ野郎だったんですが本作の主人公である佐藤健演じる稲村雄二もなかなかのクズ野郎でした。
稲村は小説家を目指して雑誌の記者として働いていたんですが何を犠牲にしても小説家になろうと考え自分の母親がかつて犯した罪をネタに記事を書くというクズっぷり。
白石監督はクズ主人公にハマっているのかな?
とまあこんなしょうもない登場人物紹介はここまでにして内容について。
本作は家族について考えさせられる作品です。
長男、次男、長女という3人の子どもたちに暴力を振るう父親に対して子どもたちを守るためにある雨の夜に母親が夫を殺してしまいます。
そんな子どもたちを思って「一夜」に母親こはるが犯した罪が逆に家族をばらばらにしてしまいます。
そして15年の月日が経って母が子どもたちの元へ戻ってきてきて母がいない15年の間に起こった子どもたちの苦しみなどが明かされていきます。
母は子供たちのためと思い罪を犯しましたが、子どもたちは世間からは人殺しの子どもたちというレッテルを貼られ、避けられ、嫌がらせをさせられ、いじめられ、夢を諦めなければいけなくなるなど様々な苦しみを味わっており、その苦しみは15年という長い年月が経ってからも続いていました。
そのため長男と長女は自分の夢を諦める事になり、次男は始めに少し語りましたが罪悪感は持ちながらも家族をネタにしてでも夢を叶えてやろうという自分本位の考えを優先させる人間に成長してしまいました。
そんな壊れかけてしまっている家族の絆をつなぎとめていたのが長女の存在でした。
母の行動で助けられたという面も確かにあった子どもたちですがその後は周りから受ける評判などはかなり強烈なもので思春期の年代の子どもたちにはかなり辛いもので母の行動は憎むべきものとなり次男だけでなく長男も多少なりとも母に対してはマイナスな感情を持っていたのは間違いありません。
しかし松岡茉優が演じた長女だけが自分たちを自由にしてくれた母には憎しみを持つこと無く、感謝の気持を持ち、帰ってきた母を受け入れ、次男がやっていることに関しては厳しい言葉で批判します。
そんな長女という強く優しい存在があったからこそ家族の絆が完全に崩壊すること無くギリギリ残っていて、回復に向かっていったのでしょう。
家族のカタチに絶対的な正解みたいなものはないと思いますが崩壊というカタチは間違っているものです。
その崩壊しかけた家族を回復させるのは家族の犯した間違いを許せる優しさや間違いを犯している家族を真正面から否定することのできる強さを持つ人間なんだなってことを感じました。
本作は役柄とその演技力も相まって間違いなく松岡茉優がMVPと言える作品です。
感動のヒューマンドラマを求めている方はぜひ劇場に足を運んでみてください。
キャスト
稲村雄二/佐藤健
稲村大樹/鈴木亮平
稲村園子/松岡茉優
稲村こはる/田中裕子
堂下道生/佐々木蔵之介
丸井進/音尾琢真
柴田弓/筒井真理子
歌川要一/浅利陽介
牛久真貴/韓英恵
稲村二三子/MEGUMI
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