こんな大人にはなりたくない! 『凪待ち』 感想(ネタバレ)

★★★★★★☆☆☆☆

日本アカデミー賞最優秀作品賞にノミネートされた『孤狼の血』で最優秀監督賞にもノミネートされた白石和彌がメガホンをとり香取慎吾が主演を演じた映画『凪待ち』のレビューです。

作品データ

公開日:6月28日

製作国:日本

配給:キノフィルムズ

上映時間:124分

主演:香取慎吾

監督:白石和彌

公式サイト:http://nagimachi.com/

映画『凪待ち』予告編

おすすめ度

★★★★★★★☆☆☆(7/10)

人と土地の回復を描く深いテーマを持つ作品です。

では詳しく見ていきましょう。

あらすじ

毎日をふらふらと無為に過ごしていた木野本郁男(香取慎吾)は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓(西田尚美)の故郷・石巻に戻る決心をした。そこには、末期がんであるにも関わらず、石巻で漁師を続ける亜弓の父・勝美(吉澤健)がいた。亜弓の娘・美波(恒松祐里)は、母の発案で引っ越しを余儀なくされ不服を抱いている。
美波を助手席に乗せ、高速道路を走る郁男に美波の声が響く。
「結婚しようって言えばいいじゃん」
半ばあきらめたように応える郁男。
「言えないよ。仕事もしないで毎日ぶらぶらしてるだけのろくでなしだし…」
実家では、近隣に住む小野寺(リリー・フランキー)が勝美の世話を焼いていた。人なつっこい小野寺は、郁男を飲み屋へ連れていく。そこで、ひどく酒に酔った村上(音尾琢真)という中学教師と出会う。村上は、亜弓の元夫で、美波の父だった。
新しい暮らしが始まり、亜弓は美容院を開業し、郁男は印刷会社で働きだす。そんな折、郁男は、会社の同僚らの誘いで競輪のアドバイスをすることに。賭けてはいないもののノミ屋でのレースに興奮する郁男。
ある日、美波は亜弓と衝突し家を飛び出す。その夜、戻らない美波を心配しパニックになる亜弓。落ち着かせようとする郁男を亜弓は激しく非難するのだった。
「自分の子供じゃないから、そんな暢気なことが言えるのよ!」
激しく捲くし立てる亜弓を車から降ろし、ひとりで探すよう突き放す郁男。
だが、その夜遅く、亜弓は遺体となって戻ってきた。郁男と別れたあと、防波堤の工事現場で何者かに殺害されたのだった。
突然の死に、愕然とする郁男と美波――。
「籍が入ってねえがら、一緒に暮らすごどはできねえ」
年老いた勝美と美波の将来を心配する小野寺は美波に言い聞かせるのだった。
一方、自分のせいで亜弓は死んだという思いがくすぶり続ける郁男。追い打ちをかけるかのように、郁男は、社員をトラブルに巻き込んだという濡れ衣をかけられ解雇となる。
「俺がいると悪いことが舞い込んでくる」
行き場のない怒りを職場で爆発させる郁男。
恋人も、仕事もなくした郁男は、自暴自棄となっていく――。

公式サイトより

感想(ネタバレ)

フィクションでもココまでクズな人間を見たことがない


本作で”香取慎吾”が演じた木野本郁男という主人公が私がいろいろ見てきたフィクション作品の登場人物の中でも群を抜いてクズ野郎でした。

仕事もまともにせずギャンブルにハマり、酒ばかり呑んでいるという男で、しかもそれらで使う金は”西田尚美”演じる同居している恋人の亜弓からもらったものという。。

恋人の亜弓と一緒に彼女の実家である石巻に行くことになり一緒に暮らす代わりにギャンブルをやめ、酒も程々に控えるという約束をしたにも関わらず結局それらをやめることもできずにいました。

しかしこんなのは序の口で物語中盤くらいで恋人の亜弓が殺害されるんですが、その後、亜弓の友人に紹介された職場で暴れまわり職場の機材を破壊し借金を作ったり、さらに金も全然持っていないにも関わらずギャンブルにそれまで以上にのめり込んでいくようになります。

しかもそのギャンブルは法律で許されたギャンブルでなくヤクザがやっている法律で禁じられている裏賭博であるノミ屋でのギャンブルなんですね。

郁夫はギャンブルで負け続け、賭金がなくなりノミ屋ならではのタネ銭をヤクザに建て替えてもらい、さらに負け続けて負のスパイラルに陥り200万円もの借金を作ることになりますがそういう状況になってもまだやめることができず亡くなった亜弓が郁夫と一緒に旅行に行くためにためていたヘソクリを持ち出し、自身がクズだと分かっていながらもそのお金でギャンブルを行いまた負けます。

郁夫の異変に気づいた亜弓の父である勝美が漁船を売って金をつくり郁夫に借金を返すために渡し、このおかげでギャンブルで作った借金を無事返すことに成功します。

しかし勝美からもらったお金はまだ50万ほど残っており、まだ職場で作った機材破損による借金が残っているにもかかわらず再びギャンブルに50万すべてを賭けるというクズっぷり。

このギャンブル以降はさらに酒に溺れ、話しかけてきた人間に殴りかかったり、酔っ払ったまま地域の祭に大声で騒ぎながら歩き回ってヤンキーに殴りかかったりとさらにグズさを増していきます。

「類は友を呼ぶ」という言葉にもあるように本作に出てくる登場人物はクズ人間が多いですが主人公の郁夫は際立ってクズでしたね。

同じようにギャンブル中毒である人間が主人公の「カイジ」に登場するカイジや「こち亀」の両津勘吉なんかもクズでしたがそれ以上のクズっぷりでフィクションの中でもココまでクズな人間は初めて見ましたね。

こんな大人にはなりたくないと思わせてくれる反面教師になってくれたキャラクターでした。

それにしても『半世界』の時の稲垣吾郎も思いましたがジャニーズをやめた元SMAPのメンバーはジャニーズのときにはやらなかったような人物を演じるようになりなんだか好感が持てる気がします。

人にも土地にもしっかり向き合おう


本作はギャンブル依存症でいろいろ問題を起こしてしまう一人の男の再生の物語なんですがそこには裏のテーマとして東北の復興というのもあったように感じられました。

郁夫の亡くなった恋人である亜弓の父、勝美が郁夫に対してしっかりと愛情を向き合い、更正させようと試みます。

正直言って亜弓が亡くなった瞬間に父である勝美と郁夫との間には彼を救う義理なんてなんも無いですが娘の恋人だった人間という理由だけでなく、勝美は昔の自分と郁夫に似た部分を感じ彼を救おうと尽力します。

郁夫は何度も勝美を裏切るようなことをしてしましますがそれでも勝美は郁夫を見捨てず正面から向き合って彼を立ち直らせようとする姿勢は素直に尊敬できる人物だと感じましたし、感動しました。

こうしたヒューマンドラマの中に映画製作者が東北が復興をしてきているということや今後のさらなる復興を願う気持ちも感じられました。

作中でも東北での震災について触れられ、徐々に復興してきていることが言及されていましたし、なんと言ってもエンディングで海底に沈む家具やピアノの描写は震災による被害とそんな状態から陸上でしっかりと人々の力によって復興してきているということの対比のように感じられました。

震災にあった方が悲しみに暮れるだけでなくしっかりと前を向いて復興に向き合いいろいろ取り組んだからこそココまで立ち直ることができたんでしょう。

人に対しても街に対しても悲しみに暮れるだけでなく正面からしっかり向き合い、平穏な暮らしを取り戻すことが大切なんだと感じました

そういったところに本作のタイトルである『凪待ち』という意味が込められているのでは無いかと思いました。

リリー・フランキーは何だったのか



この作品で一番謎だったのが”リリー・フランキー”演じる小野寺です。

小野寺は亜弓が亡くなった後、郁夫や勝美、亜弓の娘である美波のためにいろいろ世話を焼いてくれるとてもいいおじさんです。

郁夫の仕事先を紹介したのも郁夫が職場で壊した機材の弁償を代わりに行ったのも彼で、呑んだくれてフラフラしていた郁夫を慰めて生きることの大切さを語り新たに仕事を紹介なんかもしており鑑賞していて「いいおっさんだなあ」って思っていました。

しかし実は亜弓を殺害した犯人は小野寺でそれが警察につきとめられて逮捕されることになります。

しかしこれ以降、作中で小野寺について言及されることはありませんでした。

なぜ小野寺が亜弓を殺害したのか、なぜ亜弓を殺害した後に郁夫たちをあんなに面倒を見ていたのかそういった点に疑問が残ったまま本作は終わってしまったのでモヤモヤした気持ちが晴れず鑑賞して結構時間がたっている今もなお気になって仕方が無いです。

小野寺ってなんだったんだろうな。


画像: (C)2018「凪待ち」FILM PARTNERS

コメント

タイトルとURLをコピーしました