狼たちの午後 感想(レビュー)

★★★★★★★☆☆☆

1976年3月13日公開

午前十時の映画祭の映画祭というものを知っているだろうか。

午前十時の映画祭とは毎朝10時から対象の映画館で過去上映された傑作映画を低価格でリバイバル上映する映画のイベントのようなものである。

2010年から開始され毎年休むこと無く開催され、現在の第九回目を迎えており、さらに今年の4月からは第10回が開催される。また好評のため上映劇場が58館にまで及んでいる。その上映劇場の数の多さのためか上映劇場を2つに分けそれぞれ交互に違った作品を上映している。

また2013年からは上映素材がすべてデジタルに変更され、過去の名作の数々をデジタル版で鑑賞できるようになった。

しかし過去の名作の数々を低価格で提供してきたくれた午前十時の映画祭も4月からスタートする第10回を区切りに終了すると発表された。

映画ファンからすればかなり悲しいニュースであったことでしょう。私自身かなりショックでした。

そんな午前十時の映画祭の第10回以降の開催もいずれ行われることになるのを期待して今回は現在開催されている第9回の最後の上映作品「狼たちの午後」のレビューをしていきたいと思います。

※午前十時の映画祭について詳しく知りたい方はこちら

作品データ

製作国:アメリカ

配給:ワーナー・ブラザース映画

上映時間:124分

おすすめ度

★★★★★★★☆☆☆(7/10)

これってコメディ映画ですよね?

では詳しく見ていきましょう。

あらすじ

うだるような暑さが続くニューヨーク市のブルックリン区、小さな銀行に三人の男が押し入った。その目的は金庫の金を強奪することにあったが、彼らはけっして冷徹な手練れとは言い難く、出だしからトラブルにも見舞われ、その杜撰な計画は早々に暗礁に乗り上げてしまう。まず仲間の一人が怖気づいて逃げ出し、残る二人でなんとか銀行の無血占拠には成功するものの、金庫を開くとあてにしていた大金は他に移された後で無く、しかも手間取っているうちに通報が行ったのか、あっという間に警官隊に現場を取り囲まれてしまった。そしてソニーとサルの2人は、人質を取って銀行に籠城するという最悪の選択肢を選ばざるを得なくなった。
ソニーは元銀行員で従業員の事情にも通じ、銃を手にしつつも手荒な手段を取ることを選ばない。もはや果たすべき目的も叶わず、唯一の望みは安全に脱出することしかない。しかし彼らは大量の警官隊に追い詰められ、集まったマスコミに問い詰められ、そして観客たちには何故かヒーローのように祭り上げられていく。
真夏の猛暑の中、いつ終わるともない膠着状態のまま緊迫の時間は過ぎていく。はたして望まぬまま時の人となった二人の行く末は。そして事件はいかなる終息をみるのか・・・。

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感想(ネタバレ)

どちらかというと子鹿たちの午後

邦題では狼たちの午後というタイトルになっているがこれは内容とは全く合わないタイトルとなっている。

この作品を鑑賞する前は題名に狼と入っていることからかなりグロテスクなシーンの多い映画だと予想していた。しかし開始5分でこの予想は外れたなと感じた。

初め銀行強盗はソニーとサルともうひとりの三人で行うはずであったが冒頭でいきなり一人がソニーたちが銀行員に拳銃を向けた後に怖気づいて逃げてしまいソニーとサルの2人で強盗を実行することになってしまう。

またソニーも銀行員に拳銃を向けようとする時に不慣れのせいかもたついてしまうし、監視カメラを見えないようにするためにスプレーをかけようとするが十分にスプレーがかかっているようには見えなかった。

さらに前もって強盗する銀行について詳しく調べていなかったのか銀行内に残っている現金はわずかで銀行強盗というリスクを取るほどの現金も残っていなかった。

そしてなにより銀行内で必要のないボヤ騒ぎを起こし、銀行の外の保険屋になにか銀行内で異常なことが起こっているのではないかと感づかれてしまいう。

おそらくそれが原因で警察が駆けつけることになったのであろう。おそらくというのは作中で警察がすぐに駆けつけてきた理由が描かれていないからだ。そのため私は銀行内のボヤ騒ぎが原因で警察が銀行強盗に気がついたと思った。

そろそろお気づきになった方もいらっしゃると思うがこの作品の主人公ソニーはバカなのである。

この作品はそんな彼らを主人公にしているためサスペンス映画というよりもコメディ映画に近い作品となっているのである。

銀行強盗をするというのに綿密な計画を組むわけでもなく、人質を殺す勇気もなく、何より刑務所に入ることをものすごく恐れるという主人公たち。

この通り狼感はまったくなくどちらかと言うと子鹿なのである。

まあ原題は「Dog Day Afternoon」であり意味的には「盛夏の午後」という意味でこちらは映画の内容とあっているのだが。。

当時のアメリカの社会

この映画を見て感じたのは当時のアメリカ社会で市民の警察への反発があったのであろうというものである。

銀行強盗のソニーが警察のモレッティと直接会話するために銀行の外に出てきた瞬間、銀行の様子を見に来ていた野次馬たちは大盛り上がり。銀行強盗の犯人であるソニーをまるで英雄として讃えているようにも見えた。

またソニーが銀行の外に出て野次馬たちに対して「アッティカ」と叫び、彼らを盛り上げるシーンもあった。

時代背景的にこのアッティカという叫びはかつて悪名高かったアッティカ刑務所で起こった悲劇のことに言及しており、そのことが原因で政府や警察に対して当時のアメリカの国民は不信感を抱いていたのであろう。

さらに警察の無能な対応や何も持たないソニーに怯えて拳銃を彼に向けるシーンなども多く描かれており意図的に監督が警察を馬鹿にする描写にしているように感じた。

監督であるシドニー・ルメット自身も当時の権力者たちを非難していることを映画を通じて表現しているのであろう。

ストックホルム症候群

この映画のサブタイトルにできる単語としてストックホルム症候群が挙げられるであろう。

詳しく説明すると長くなってしまうので簡単にこの症候群について説明すると犯罪の被害者が加害者に対して生存のために好意を持ってしまうというものである。

このストックホルム症候群が本作にも顕著に現れている。

ソニーたちが襲った銀行で働く女性たちは人質とされた当初、ソニーたちに対して恐怖の念を抱いていた。

しかし時間の経過とともにソニーたちとまともに会話ができるようになり、中盤くらいからはまるで昔からの友人同士であるかのように仲よさげに会話しているシーンが多く見受けられた。

しかし最後のソニーが捕まり、銀行員たちが人質から開放されてみんなで喜び合っているシーンで彼女たちはソニーに一瞬たりとも目をくれることはなかった。

ついさっきまで仲よさげに話していたソニーと銀行員たちだが所詮は死の恐怖から作られた偽物の関係だった。

人間の生存本能の凄さをこの映画で感じさせられました。

アル・パチーノの演技

私自身ゴッドファーザーなどのアル・パチーノの出演作品を鑑賞したことはなく、演技がうまいということだけ聞いたことがあった状況で今作を鑑賞した。

結論から言うと噂通りの演技の巧さであった。

ソニーの仲間のサルや警察のモレッティとの会話時の表情の一つ一つや野次馬たちを煽る行動だったり、バカな一面などソニーというキャラクターにうまくなりきれていたと感じた。

個人的に一番すごいと思ったシーンは物語の最後ソニーが捕まった時にさっきまで仲良く話していて仲間意識みたいのものまで生まれたと思っていた銀行員たちが人質から開放された後ソニーの方を一切振り返らない事に気がついたソニーがした表情。

裏切られたことからくるなんとも悔しげで寂しそうな顔。この表情が本当にすごかった。

実際、私自身が友人だと思っていた人に裏切られた時にこういった表情になるんだろうとなんだか切なくなってきました。

本当にソニーになりきれていたと思います。

午前十時の映画祭10でアル・パチーノの主演のゴッドファーザーが上映されるのでまたアル・パチーノの巧みな演技を観に行きます。

キャスト

ソニー:アル・パチーノ

サル:ジョン・カザール

レオン:クリス・サラドン モレッティ:チャールズ・ダーニング シェルドン:ジェームズ・ブロデリック

スタッフ

監督:シドニー・ルメット

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